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題詠blog2007(自選50首)

001:始
始まりは揚羽ひとひら君の耳かすめ私の脳に沈んだ

003:屋根
屋根という屋根には鏡風船の赤閉じ込めて今日のあおぞら

005:しあわせ
「しあわせにくらしました」の後の行死まで何千頁の空白

006:使
使わない食器や家具が増えてゆく架空の男と暮らし始めて

008:種
蹲る人人人は種になりきみどりいろの夢をみている

009:週末
さくらさくらさくらに塗れ迷子にはなれぬ週末人に紛れる

010:握
ひと握りほどの言葉とチョコレイト死んでもいいと思う春の日

011:すきま
すきまから見えているのは四月ですあなたを埋めた春が来ました

012:赤
吊るされて赤い襦袢は風孕む昔むかしの恋のことなど

013:スポーツ
ブラウン管闇夜と私映すからスポーツニュース消せないでいる

014:温
温暖化告げるテレビをながら観し足の小指を空色に塗る

016:吹
長く細く削るえんぴつ増えてゆくいのち吹き込む遊び覚えて

017:玉ねぎ
半分に切った玉ねぎ半分になったこころで春に伸びゆく

019:男
男でも女でもないわたしたち影ふみ影はひとつに融けた

021:競
(競)の字は孤独な双子理由もなく合わせ鏡の世界を走る

023:誰
高架下ふえる落描き雨の日は見知らぬ誰かの事を想った

026:地図
地図にない街などないと知っている蛍光ピンクに塗る欧羅巴

028:カーテン
未だひとの妻でいようか曖昧な境界ゆらす白いカーテン

029:国
国ひとつ潰す苛立ちキーを打つ音かたかたと満ちてゆく夜

030:いたずら
いたずらの文字の大小ひらがなの軽さ重さも畳んで棄てる

032:ニュース
異国には異国のニュースただ眠る為に男の声が流れる

034:配
特別な生も死もなく配られた仏花みひらくように咲く百合

035:昭和
思い出も切り売りをする分身の子熊は昭和レトロのおもちゃ

036:湯
ゆるゆると溶け出す思いぬるま湯の中ならきっと泣けるんだろう

039:理想
一粒の理想は風に飛ばされて誰かの庭に赤いアネモネ

041:障
差し障り無い会話などぐるぐると包帯みたいに巻いた脱ぎたい

042:海
藍赤黄散らして驟雨ブラウスの釦海から剥がれ落ちた日

043:ためいき
空洞に水色のもの満ちてきてためいきとして街に捨て去る

046:階段
降りてゆくだけの螺旋階段が在るよ種に還るひとたち

047:没
没にした言葉みたいな蟻の列黒いヒールで散らす炎天

050:仮面
雑踏に人を探せばはだいろの仮面ばかりが溢れる日曜

053:爪
深爪のいびつを愛す虹色の鱗のような爪の女は

054:電車
棄てたもの乗せて電車は南下する詩集こいびとわたし6月

055:労
労いの言葉をかける術もなくあなたの街に紫陽花は咲く

056:タオル
空色のタオルに顔を埋めたら君みずうみのように融け出す

057:空気
20年前の空気を抱いている地球儀からからからと回して

058:鐘
鐘という鐘は鳴るため生きるため生まれたわたしたちの沈黙

064:ピアノ
飴色の空に吊られたピアノ線頷くヒトガタばかりたすけて

067:夕立
夕立に流れゆくもの水色の記憶八月君の体温

069:卒業
卒業の日から十年はなびらを増やすさくらのようになれずに

071:鉄
ふれぬようふれられぬよう遠く来て有刺鉄線越しの夕焼け

072:リモコン
何もかも運び出されてアパートのキッチン見知らぬリモコンひとつ

074:英語
洪水のように英語のメイル来る「元気ですか」と書けず流れる

075:鳥
黒々と泡立つように鳥帰る一本の木にふれる寂しい

077:写真
こいびとは少年のまま百枚の写真水辺に浮かぶNymphaea

081:露
朝露が汚すスカート海までの距離を思って走り出したら

082:サイレン
サイレンの音が遠のき真っ暗な部屋で無音を確かめている

085:きざし
爪先に枯葉壊れる音がして冬のきざしが頬を掠めた

092:ホテル
片言の英語があってあたたかいパリのホテルの三日目の朝

096:模様
月光は網の模様を水に描き尾鰭を持たぬもののかなしみ
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by nnote | 2009-04-10 12:34 | 過去短歌
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