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鷹女のことば。

年を重ねていくに従い、
このあと、短歌とどうやって関わるのか考えるとき、
どこかで目にした、三橋鷹女のことばを思い出す。
(晩年の句集『羊歯地獄』の自序の一部を引用)

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一句を書くことは 一片の鱗の剥脱である
四十代に入つて初めてこの事を識つた

五十の坂を登りながら気付いたことは
剥脱した鱗の跡が 新しい鱗の芽生えによつて補はれてゐる事であつた

だが然し 六十歳のこの期に及んでは
失せた鱗の跡はもはや永遠に赤禿の儘である
今ここに その見苦しい傷痕を眺め
わが躯を蔽ふ残り少ない鱗の數をかぞへながら
独り 呟く・・・・・・

一句を書くことは 一片の鱗の剥脱である
一片の鱗の剥脱は 生きてゐることの証だと思ふ

一片づつ 一片づつ剥脱して全身赤裸となる日の為に
「生きて 書け・・・」と心を励ます

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鷹女の生き方にあこがれる。
自分の晩年をぼんやり考える。
以下は私の好きな鷹女の俳句。

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夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり

この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉

秋風や水より淡き魚のひれ 

暖炉昏し壺の椿を投げ入れよ 

白露や死んでゆく日も帯締めて

千の蟲鳴く一匹の狂ひ鳴き   (最晩年) 

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実生活ではなかなか実現しにくい、孤高という「潔さ」。
表現の上だけでも鷹女の潔さを、心に留めておきたいと思う。
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by nnote | 2009-06-15 10:54 | 日日雑記
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