001:始
始まりは揚羽ひとひら君の耳かすめ私の脳に沈んだ 003:屋根 屋根という屋根には鏡風船の赤閉じ込めて今日のあおぞら 005:しあわせ 「しあわせにくらしました」の後の行死まで何千頁の空白 006:使 使わない食器や家具が増えてゆく架空の男と暮らし始めて 008:種 蹲る人人人は種になりきみどりいろの夢をみている 009:週末 さくらさくらさくらに塗れ迷子にはなれぬ週末人に紛れる 010:握 ひと握りほどの言葉とチョコレイト死んでもいいと思う春の日 011:すきま すきまから見えているのは四月ですあなたを埋めた春が来ました 012:赤 吊るされて赤い襦袢は風孕む昔むかしの恋のことなど 013:スポーツ ブラウン管闇夜と私映すからスポーツニュース消せないでいる 014:温 温暖化告げるテレビをながら観し足の小指を空色に塗る 016:吹 長く細く削るえんぴつ増えてゆくいのち吹き込む遊び覚えて 017:玉ねぎ 半分に切った玉ねぎ半分になったこころで春に伸びゆく 019:男 男でも女でもないわたしたち影ふみ影はひとつに融けた 021:競 (競)の字は孤独な双子理由もなく合わせ鏡の世界を走る 023:誰 高架下ふえる落描き雨の日は見知らぬ誰かの事を想った 026:地図 地図にない街などないと知っている蛍光ピンクに塗る欧羅巴 028:カーテン 未だひとの妻でいようか曖昧な境界ゆらす白いカーテン 029:国 国ひとつ潰す苛立ちキーを打つ音かたかたと満ちてゆく夜 030:いたずら いたずらの文字の大小ひらがなの軽さ重さも畳んで棄てる 032:ニュース 異国には異国のニュースただ眠る為に男の声が流れる 034:配 特別な生も死もなく配られた仏花みひらくように咲く百合 035:昭和 思い出も切り売りをする分身の子熊は昭和レトロのおもちゃ 036:湯 ゆるゆると溶け出す思いぬるま湯の中ならきっと泣けるんだろう 039:理想 一粒の理想は風に飛ばされて誰かの庭に赤いアネモネ 041:障 差し障り無い会話などぐるぐると包帯みたいに巻いた脱ぎたい 042:海 藍赤黄散らして驟雨ブラウスの釦海から剥がれ落ちた日 043:ためいき 空洞に水色のもの満ちてきてためいきとして街に捨て去る 046:階段 降りてゆくだけの螺旋階段が在るよ種に還るひとたち 047:没 没にした言葉みたいな蟻の列黒いヒールで散らす炎天 050:仮面 雑踏に人を探せばはだいろの仮面ばかりが溢れる日曜 053:爪 深爪のいびつを愛す虹色の鱗のような爪の女は 054:電車 棄てたもの乗せて電車は南下する詩集こいびとわたし6月 055:労 労いの言葉をかける術もなくあなたの街に紫陽花は咲く 056:タオル 空色のタオルに顔を埋めたら君みずうみのように融け出す 057:空気 20年前の空気を抱いている地球儀からからからと回して 058:鐘 鐘という鐘は鳴るため生きるため生まれたわたしたちの沈黙 064:ピアノ 飴色の空に吊られたピアノ線頷くヒトガタばかりたすけて 067:夕立 夕立に流れゆくもの水色の記憶八月君の体温 069:卒業 卒業の日から十年はなびらを増やすさくらのようになれずに 071:鉄 ふれぬようふれられぬよう遠く来て有刺鉄線越しの夕焼け 072:リモコン 何もかも運び出されてアパートのキッチン見知らぬリモコンひとつ 074:英語 洪水のように英語のメイル来る「元気ですか」と書けず流れる 075:鳥 黒々と泡立つように鳥帰る一本の木にふれる寂しい 077:写真 こいびとは少年のまま百枚の写真水辺に浮かぶNymphaea 081:露 朝露が汚すスカート海までの距離を思って走り出したら 082:サイレン サイレンの音が遠のき真っ暗な部屋で無音を確かめている 085:きざし 爪先に枯葉壊れる音がして冬のきざしが頬を掠めた 092:ホテル 片言の英語があってあたたかいパリのホテルの三日目の朝 096:模様 月光は網の模様を水に描き尾鰭を持たぬもののかなしみ #
by nnote
| 2009-04-10 12:34
| 過去短歌
青鬼灯年月は経る青のまま硬く閉じたる心は核に
残酷な童話は閉じよ赤頭巾被り老婆になりし夕暮れ 鉄の小さき龍棲みし腕昔日我の指に餓へ来ぬ 天邪鬼少女の余生花えんじゅ此処よ此処よと揺らして居りぬ ピンホールカメラに焼きし黒縁の世界あざやか君の夏服 夕暮の底の図書館それぞれの宇宙浮かべて静かなるヒト 台風の螺旋たどれば懐かしき少女のほとの果ての我が部屋 散らかした言葉六月風に舞うボタンのようにちいさな本当 姓変る朝薄曇切り取って蝶のかたちを君に贈ろう -------------------------------------* mixiの短歌点等に投稿したものも含んでいます。 #
by nnote
| 2009-04-09 14:45
| 過去短歌
■写真・短歌を載せているひと。 *エヌ・ノート。 *日本の真ん中あたりにいます。 *感覚と勘で生きています。 中学生の頃、中原中也が好きでした。 月夜の晩に、ボタンを落としに行った程。 18歳、短詩型と出会いました。 担任が俳人だったのです。 小林恭二の『青春俳句講座』という本はよいですよ。 寺山修司や塚本邦雄を知りました。 この頃『未定』という同人誌に、 少しお世話になりました。 いただいたお手紙とか、 今でも大事にしています。 春になると言葉が溢れてくるようで、 私の短歌や俳句は春のものが多いです。 私のつぶやきが誰かのつぶやきになったら。 これがわたしのゆめです。 #
by nnote
| 2009-04-07 22:29
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